歯周病
歯周病は大切な歯を失う一番の原因です
近年で歯を失う1番の原因は、実はむし歯ではなく歯周病だということをご存知ですか?
歯を支える土台ともなる歯肉は、健康な状態では引き締まったピンク色をしています。
歯周病は歯肉の感染症であり、健康な歯肉に慢性的に腫れを生じさせたり出血しやすくなるなどといったトラブルを引き起こします。
一般的に歯周病で思い浮かべる症状は、上記のような歯肉からの出血や腫れ、歯肉が下がる、しみるなどが代表的です。
しかし、歯周病は放置しているといずれ顎の骨を吸収して失くしてしまうほどの深刻な状態へと進行し、歯が抜け落ちてしまうなど大切な歯を失う最大の原因となる恐ろしい病気なのです。
歯肉が腫れるとは?
- 歯肉の色がいつもと違う
- 歯肉がブヨブヨする
- 歯肉から血が出やすくなる
- 歯肉がむずがゆい
- かたいものが食べづらい
などといった経験はありませんか?
それはまさに歯肉に炎症が起こっている状態であり、これらは歯周病の代表的な症状です。
腐ったリンゴを例に挙げると、ちょっと触れただけでグチャとした感触や汁が出てきます。
歯肉もそれと同じで、ブヨブヨとした感触や出血は異常が生じている証拠となります。
原因は歯周ポケットで繁殖する歯周病菌です
歯肉炎という歯肉が腫れた状態が続くと、歯と歯肉の境目には歯周ポケットと呼ばれる溝ができます。
その部分に食べ物のカスや歯垢(プラーク)が沈着してしまうことで歯周病の菌が繁殖します。
その結果歯肉の腫れや出血、さらに悪化すると顎の骨を吸収し失くしてしまう症状(骨吸収)を引き起こす原因となります。
むし歯の主原因となるミュータンス菌だけでなく、口腔内には何億という数の菌が存在しています。
歯周病の治療について
まずは歯周ポケットをきれいにクリーニングすることが必要となります。
食べ物のカスや歯垢(プラーク)などの細菌の塊を取り除き、歯石などの沈着物も適切に除去します。
歯周病は再発しやすいため、ご自宅でのセルフケアと口腔内の定期的なクリーニングを継続して行うことがとても大切です。
こんな方は歯周病に要注意!
妊娠中の方
妊娠中は特に歯周病になりやすい時期でもあります。
P.intermedia(プレボテラ・インターメディア)という菌がその代表例であり、この菌は女性ホルモンを好むため妊娠性歯肉炎という状態を引き起こしやすくなります。
また歯周病原菌の代表、P.gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)は早産や低体重児出産のリスクを高める種類もあるため、菌の増殖を防ぐためにも妊娠中の口腔内のケアはとても大切となります。
喫煙をされる方
ニコチンをはじめとしたタバコに含まれるさまざまな化学物質や一酸化炭素による影響で血液循環が悪くなり、口腔内の組織にも酸欠や栄養不足を招きます。
それにより細菌に対する防御機能が低下し歯周病の進行リスクが高まるだけでなく、歯肉が硬くなる(歯肉線維化)ため腫れや出血を起こしにくい傾向になります。
そのため歯周病の症状に気がつきにくく、歯周病が進行しやすくなるのです。
糖尿病などの疾病をお持ちの方
糖尿病になると細菌に対する抵抗力や組織の修復力が低下します。
病気の特性上、口腔内も乾燥しやすくなるため歯周病が進行しやすくなります。
また歯周病と糖尿病は相関関係にあり、歯周病の人は糖尿病になりやすく(悪化しやすく)糖尿病の人は歯周病になりやすい(悪化しやすい)こともわかっています。
ブラッシング等が不十分で口腔内環境が悪い方
磨き残しが多いなど日常的な口腔内のケアが不十分な場合には、歯周ポケットにも汚れが大量に詰まったままとなっています。細菌が活発に繁殖を行うことで歯周病の重症化を招きやすくなります。
栄養失調の方
意外に思われるかもしれませんが、栄養失調は現代社会においても珍しくない事例です。特にビタミンやタンパク質、食物繊維が足りない方は非常に多く見受けられます。
例えば毎日ラーメンを食べるなど、偏った食事生活をされている方などはビタミン成分が足りないことで歯肉から出血しやすくなります。
食生活の乱れや偏りによる栄養失調は、老若男女問わず誰もが陥りやすい落とし穴のひとつです。
診断や検査について
まずはレントゲン撮影を行った上で、専用の検査器具にて歯周ポケットの深さと炎症の有無を一本一本細かく測定します。
あわせて歯周病の進行による歯の揺れが発生していないかも確認しながら正しく診断いたします。
担当の歯科医師と歯科衛生士がしっかりとタッグを組み、サポートさせていただきます。
超音波スケーラー
超音波の細かな振動で歯石や歯周ポケットの奥深くに潜む菌まで細かく掻き出し除去します。
丁寧なブラッシング指導
歯の形や歯並びなど、口腔内の状態は一人一人異なります。
その方にあった歯ブラシの正しい選び方からブラシの当て方、力の加減まで担当の歯科衛生士がわかりやすく丁寧にご指導させていただきます。
染色による磨き残しの確認
専用液で歯に付着した菌(プラーク・歯垢)を染め出すことで、磨き残しやすい部分がどこにあるかを目で見てわかりやすく理解できます。
当院のこだわり
当院では歯科衛生士による患者さんの口腔内データの共有を行っております。
現在の口腔内の状態を患者さんご自身にもしっかりとご理解いただくために、診断結果はiPad等で共有しながらわかりやすくご説明させていただいております。
最大の防御策は普段からの丁寧なブラッシングです
歯周病はギネスにも認定されているほど、世界中で最も患者数が多い病気として知られています。
この歯周病が最も恐ろしい理由は、自覚症状が乏しい状態のまま進行を続け、気づかぬうちに顎の骨を吸収し失くしてしまうほどの深刻な状態に陥ってしまう点にあります。
最大の防御策は、何と言っても普段からの細菌の適切なコントロールといえます。
鉢に植えられた木が風雨によって少しずつ土が流れ弱り枯れてゆくように、歯肉は歯周病の影響を徐々に受け、気づかぬうちに力が弱まります。
症状を放置したままある程度の年月を重ねると、突然歯が抜け落ちてしまわれることもあります。
歯周病は加齢による影響によっても起こりやすくなります。
歯を失うことは生活の質(QOL)にもダイレクトに関わる重大な問題です。
だからこそ日頃からの丁寧なブラッシングに加え、歯科医院での定期的なクリーニングの合わせ技による細菌のコントロールが必要となります。